読書メモを書いておくと、後でいろいろ便利。でも、5月はかなり読み(45冊)、少しずつメモを書いていたら7月、になってしまった。5月はSFをよく読む、年刊日本SF傑作選から派生。
医学・自然科学:別冊 医学のあゆみ 癌幹細胞のパラダイムシフト ○
久しぶりにがん関連の本(雑誌の別冊)を読む。白血病や、乳がん以外の固形癌に幹細胞関連の内容が多い。目次とそれぞれの概要は
このリンクで読むことができる。microRNA関連の論文が最近多いので、「
癌幹細胞とmicroRNA」が興味深かった。
足立 恒雄
√2の不思議 ◎
数学者の数学エッセイ。できるだけ数式を使わないように書こうとしたとの事だが、やはり数式はそれなりに出てくる。p.46「式が一つ出てくるたびに、本の売れ行きは半分になるそうだ」に笑った。この本に紹介されていた、「
数学七つの迷信」(小針あき宏著・絶版)も、図書館で探し読んだが、これも全共闘世代の香りがするなかなか楽しい数学本。
太田 朋子
分子進化のほぼ中立説 偶然と淘汰の進化モデル ○
ブルーバックス。ちょうどその後、分子生物学系の研究発表を聞き、質疑をする時の助けになった。生物にしては珍しく数式が出てくるが、比較的簡単な確率論モデル。分子生物学が一見難しく見える原因は、見慣れぬ用語と名称が使われること。理解するためには、外国語を学ぶように、その用語を忘れないように、常時接している必要があると思う。ブログ"
shorebird 進化心理学中心の書評など"に
丁寧な書評があった。
山科 正平
細胞発見物語 その驚くべき構造の解明からiPS細胞まで ◎
ブルーバックス。細胞よりも、顕微鏡の歴史や原理の勉強になった。細胞の顕微鏡画像解析の理解のためには、非常に役に立つのでおすすめ。
横田 睦
お骨のゆくえ 火葬大国ニッポンの技術 ◎
2000年刊の新書だが非常に面白い。横田睦博士は建築学科の学士・修士・博士論文までずっとお墓が専門。江戸中期からやっと定着し始めた檀家制度や寺・墓地に関しても知っているつもりだったが思い込みばかりで、次々と目からうろこ。日本の歴史・宗教観や自分と家族の葬儀についてよく調べ、考えようと思った。
どんな話が書いてあるか、ちょっと覗ける→HP"
お墓検索-お骨のゆくえ"
葬送や墓についてつきつめていくと、死をどう考えるかという事に行き着く。この関連では養老孟司の『
ヒトはなぜ埋葬するのか』、『
カミとヒトの解剖学』もお薦め。
SF小説:年刊SF日本SF傑作選 虚構機関 ◎
2007年の日本SF短篇から選ばれただけあって、面白いSFが揃っていた。また長編や海外SFについてもかなり詳しい解説が付いていて、便利なSFガイドになっていて、本文より面白いかも。ここから、大量にSFを読むことに。
年刊SF日本SF傑作選 超弦領域 ◎
同じく2008年の日本SF短篇。これも解説が面白かった。
コニー・ウィリス
犬は勘定に入れません あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎 ○
イギリス19世紀のオックスフォードへのユーモアタイムトラベルSF。
J.K.ジェローム(
Jerome Klapka Jerome)の『
ボートの3人男』 (原題 "
Three Men in a Boat, To Say Nothing of the Dog!" 長らく絶版だったが、今年復刊)が大好きなので、それに絡んだSFということで読んでみたかった本。時間SFとしてはまあまあだが、オックスフォードの変人教授達や、犬・猫が面白いので○。
フランケンシュタインの子供 ○
ボートの3人男のJ.K.ジェロームによるホラー短篇『ダンシングパートナー』も載っている、人造人間ホラーアンソロジー。
サーバー
虹をつかむ男 △
早川書房の異色作家短篇集シリーズの再版20冊の内の一つ。世評は高いが、私はあまりサーバーは好きではない。表題『虹をつかむ男
The Secret Life of Walter Mitty』はダニー・ケイ主演の有名な映画の原作。
ラッセル
嘲笑う男 △
同じく
早川書房の異色作家短篇集シリーズの再版20冊の内の一つ。ちょっと古めのSF。なかなか再版や別の訳が出なかったのもこのせいかな。
鏡 明
不確定世界の探偵物語 ◎
1984年が初版だけれど全然古さを感じない。タイムマシンの過去の歴史改変のせいで人も物も変わってしまう中で、しがない探偵稼業を続ける主人公という設定が個性的。鏡明の小説作品は少ないので貴重。
円城 塔
Self-Reference ENGINE △
年刊SF日本SF傑作選の2冊共に短篇が紹介されていたし、題名がギブスン/スターリングの『
ディファレンスエンジン』のもじり?という事で読んでみた。メタフィクションぽい感じなので読みにくいが、巨大知性体がらみの妙なユーモアは楽しめる。Twitterでみつけた著者の『
ポスドクからポストポスドクへ(<シリーズ>"ポスドク"問題 その12) 』という文章がCiNiiに上がっていて読んでみる。ポスドクから、Webエンジニアとなり、SF小説家に。大変な道をたどっているなと感心。
ノンフィクション・エッセイ:最相 葉月
星新一 一〇〇一話をつくった人 ○
2008年の星雲賞ノンフィクション部門などたくさんの賞を獲得した星新一の評伝。SF関連以外、殆ど文壇の賞に縁の無かった星新一の話がいろいろ出てくる。私自身が読み始めたのは1970年前後からで、最初が『
進化した猿たち』『
新・進化した猿たち』というアメリカヒトコママンガに関するエッセイ。当時はハードカバー。現在、早川文庫も新潮文庫も絶版。この本で知った作家(シェクリー、エリンなど)も多い。そして今も枕元の本棚に星新一の短篇集やエッセイを全て揃え、度々読み返し続けている。そういう作家なだけに、この本を読むと辛い。彼のショートショートを子どもだけが読むとか、マンネリだとか評した同時代の人って読解力がないなと思う。
高島 俊男
天下之記者「奇人」山田一郎とその時代 ○
新書だが読みでがある。高島俊男が実証的に描く、江戸から明治の変革期の大学の草創期の学生たちや、大学の創設者たちの群像劇としても面白い。山田一郎という小心ゆえに我を張ってしまい、「天下之記者」と呼ばれながらも、思わぬ人生を送ったジャーナリストの物語。
宮崎 市定
隋の煬帝 ○
宮崎市定は京都学派の重鎮、東洋史学者だが、書いた物がとても面白く、特に『
科挙』がとにかく面白かった。王朝名「隋」は「随」から、走る意味のしんにょうを取った、この時代の新字とのこと。(なお、煬帝は読みぐせで「ようだい」だったが、最近は他の帝と統一し「ようてい」と読む。高島俊男の本で知った。)
みうら じゅん
カスハガの世界 ○
「ゆるキャラ」のように一般名詞化したものもあるが
みうらじゅんのマイブームの中で、「カスハガ」はそれほどではない。「
いやげ物」の仲間という気もするが、やっぱり楽しい。海外ではかなりひどい絵葉書を手に入れたことはあるが、国内にもすごい絵葉書があって爆笑。
東海林 さだお
微視的お宝鑑定団 ○
いつものように、手堅く笑えるエッセイ集。
村松 友視
遊びをせんとや ○
「○○あそび」というタイトルで50篇余り。
・「直木三十五あそび」直木三十五が好きだった静岡の芸者さんが結婚したのが建築家、吉田五十八。あの立て直しが決まった歌舞伎座の設計者。「三十五が五十八に負けた」に笑った。
・「廃船あそび」米子空港から松江に向かう途中、大根島あたりに廃船が繋がれて堤防がわりになっている風景の話。偶然、GW中に同じ道筋を通ったばかり。
・小林信彦の随筆から松江に行ってみたくなったが、「長崎あそび」を読んで、長崎に行ってみたくなった。次の旅は長崎。
プロコフィエフ短編集 △
短篇小説はそれほど面白くないが、巻末に1918年5-8月の日記。ロシア革命後、米国ビザ待で日本滞在、横浜ではグランドホテルに。「ホテルは快適で気持ちがいい。朝食は62皿もあるバイキング」とか、大正7年の風景にほおーんと感心。
フィクション・小説:アンドレ・マルロー
人間の条件 △
英語クラスのアンドレ・マルローに関するエッセイの予習のため読む(絶版)。緊迫感のある1920年代の中国共産党内のクーデターや暗殺など内紛話。"
La Condition Humaine"が仏語原題らしいが英語では"Man's Fate"、不思議。
文豪怪談傑作選
柳田國男集 幽冥談 ○
遠野物語など以外は、小説というより評論が多いが、怪談好きだったようだ。
文豪怪談傑作選 三島由紀夫集 ○
三島由紀夫は遠野物語を絶賛。やはり、怪談好きだったらしい。
文豪怪談傑作選シリーズも今までいろいろ読んできて、後少し。はずれが少ないのでおすすめ。
荒俣 宏編
ゴードン・スミスの日本怪談 ○
話より、日本画家の絵が面白い逸品。
6月の読書に続く。
theme : 読んだ本。
genre : 本・雑誌